さまざまな事情を抱える私たち
産休・育休や介護休業で、復職の意思を持ちながら比較的長期にわたって職場を離れる人もいれば、育児や介護、家族や自分の病気等、さまざまな事情により、時短勤務を選択したり、正社員からパート社員へ変更したりする人もいます。
少子化・高齢化、家族のかたちの変化や暮らしの都市化、世界・社会情勢などを反映し、働く私たち一人一人が抱える事情はますます複雑になりつつあります。
「会社」という組織は、そのような個々の事情を抱える「人間」が支えています。
慢性的な人手不足を解決するために
以前までならば、組織内の人事に関する複雑性はできるだけ避けたいことであったといえるでしょう。画一的なルールの下、管理しやすい体制を維持し、それによって利益を安定的に出すことを重視していた傾向がありました。
しかし、そういったルールに則ることのできない事情があるがゆえに離職せざるをえず、人材の流出につながてしまうことや、結果的に人材の多様性が失われ組織が硬直化してしまうことなどの問題がありました。
そのような状況下において、さらに、日本の労働市場では「人手不足」が深刻化しています。
厚生労働省が2019年7月に発表した報告書によると、2012年以降続く景気回復・経済拡大の中で、多くの企業において人手不足の実感が高まってます。特徴として、企業規模が小さいほど深刻ですが、大企業においても例外ではありません。
帝国データバンクが2021年7月に実施した調査によると、正社員について「不足」していると回答した企業は40.7%で、2019年7月の水準と比較すると7.8ポイント下回っているものの、2020年7月からは10.3ポイント増加しています。
企業を規模別にみると、「大企業」で46.2%、「中小企業」は39.6%、また、「中小企業」のうち「小規模企業」は36.2%となっています。
このように、正社員の人手不足の割合は、全ての規模で2020年5月〜6月以降上昇傾向が続いています。非正社員が「不足」していると回答した企業も22.5%と、前年同月比で増加しています。
「人手不足」の解決策として採用活動に力を入れることも大切ですが、社内の体制やプロセスを見直したり、ITツールを導入するなどの工夫により、「生産性」を高めることも必要となってきました。
一方で、「生産性」の向上を重視するあまり「人間性」を蔑ろにするやり方では、これまでメンタルヘルスの問題などが多く指摘されています。
目標や数値にのみとらわれず、個々人がいきいきと働ける環境をつくることが、組織全体の健全なあり方、ひいては中長期的な成長にとって欠かせません。
そこで近年一層の注目を集めているのが、職場において、個々の社員・スタッフの「ウェルビーイング」を高めていこうという考え方です。「ウェルビーイング」が意味する「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(1946年、WHO/日本WHO協会仮訳)」にある場合、人はその創造性や生産性が向上するといわれているからです。
職場におけるウェルビーイング
社員やスタッフのウェルビーイングを高めるため、会社は何ができるでしょうか?
ヒントは、ウェルビーイングの5つの要素にあります。
見てみましょう:
- Career Wellbeing(キャリア ウェルビーイング): キャリアの幸福。時間の使い方、日々自分が費やしている時間に満足しているかどうか。ここでいう「キャリア」はいわゆる「仕事」のことのみを指すのではなく、自分の時間の大半を費やしていること、そのことに満足しているかどうかという広い意味を持ち、家事育児や趣味、勉強、ボランティアなども含みます。
- Social Wellbeing(ソーシャル ウェルビーイング): 人間関係の幸福。人生において、しっかりとした人間関係を結び、愛情を育んでいるかどうか。
- Financial Wellbeing(ファイナンシャル ウェルビーイング): 経済的なウェルビーイング。自身の収入を得る方法を獲得し、また資産を有効に管理できているかどうか。
- Physical Wellbeing(フィジカル ウェルビーイング): 身体的・精神的な幸福。心身ともに健康であり、やりたいと思うことができる(活動する)エネルギー(活力)を持っているかどうか。
- Community Wellbeing(コミュニティ ウェルビーイング): 地域社会における幸福。自分が暮らす地域とのつながり、広義には職場なども含め自分が属するコミュニティと関わり、つながっている実感があるかどうか。
会社で過ごす時間の充実度、仕事と生活のバランス、報酬・賃金の設定、人間関係、所属意識など、会社・職場は、個人のウェルビーイングのほぼすべての項目に関わっていることがわかります。
例えば「キャリアウェルビーイング」についていえば、ライフステージや事情に応じた働き方・配置を可能にすることも含まれるでしょう。
また、人間関係を良好に保つことや所属意識を持つことは、一日のうち長い時間を過ごす職場においてその占める割合・果たす役割は重要といえるでしょう。
関係性づくりの重要性と多様な働き方
ウェルビーイングの向上を目指し、フレキシビリティのある働き方を推奨すると、働き方に多様性が出てきます。
育休や介護に代表されるように、フルタイムで働いていた社員がライフステージや事情に応じて、職種や職位、勤務時間や勤務場所を変更したり、また、一定期間職場から離れるというケースもあるでしょう。
その場合、人間関係や所属意識にも変化が生じることがあります。直接的なコミュニケーションの場が減ったり方法が変わることで得られる情報が少なくなったり、立場や環境の変化に馴染めず、だんだんと疎外感や孤立感を持ってしまうことも想定されます。
例えば、休職者の職場復帰に向けては、面談などを導入している企業も多いでしょう。産休・育休の場合などは、同様の休業から復帰して働いている社員との交流会を企画するなどしてサポートする企業も少なくありません。
また、復職後にスムーズな職場復帰を促すため、休業中にもタブレット端末を貸与し、組織・人事情報などを中心とした社内情報を共有している企業もあるようです。
社内イベントのオンライン化に期待する役割
こうした中で、以前より実施されてきた「社内イベント」の「オンライン化」にも、期待が集まっっています。
社内イベントの目的は、大きく分けて3つに整理されます。
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モチベーションやエンゲージメントを高めるためのもの
例)周年イベント、社員総会、キックオフイベント、表彰式など
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コミュニケーションを高めるためのもの
例)ワークショップ、交流会・懇親会など
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スキルアップを目指すもの
例)「○○講座」などの研修、合宿など
いずれも、社員やスタッフが顔を合わせ、普段の業務範囲に留まらない交流や、新たな能力・価値などに気づくきっかけをもつことで、組織への帰属意識を高めたり、自信を持つことにつながるため、多くの会社や組織で恒常的に行われてきました。
しかし、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で、大人数が一度に集まる社内イベントが開催できない、また開催しづらい状況が続いています。
そこで「オンライン社内イベント」を導入する会社や組織も増えてきました。
リモートワーク・テレワークにシフトし、コミュニケーションが希薄化したと感じる社員・スタッフが多い中で、オンラインでも、多くのメンバーが一堂に会する機会は貴重といえるからです。
オンラインイベントは、オフラインでの開催に比べ、自宅から参加できる・拘束時間が短いなどの気軽さにより、任意のイベントへの参加もしやすくなるほか、家族参加型のイベント実施が可能になるなど、新たな価値の創出にもつながっています。
株式会社Sonoligoが実施したオンラインイベント(労働組合向け)の事後アンケートでも、約5割がイベントへの初参加であり、75%の参加者が「満足した」と回答しています。実際、「自宅からだったので気軽に参加できた」「子どもと一緒に参加できたのがうれしかった」という声が聞かれました。
特に、レクリエーション的な要素を持つイベントは、これまでその殆どがリアル開催であったため、コロナ以前より、すべての社員やスタッフにとって参加しやすいものではない、という問題がありました。
イベントのオンライン化により、様々な事情を抱える社員やスタッフとも、レクリエーションの機会を共有してともに楽しんだり、前後の時間を活用した参加者同士の交流を促進したりすることで、組織に所属している実感を持ってもらう、また、社員・スタッフ同士の関係性の維持や向上に役立てることが可能になりました。
リモートワーク・テレワークを含め、組織内で多様な働き方が一層広まる中で、多くの経営者やリーダー層、人事・総務などの担当者にとっては、どうやって多様化していく組織内のコミュニケーションを活性化させ、いきいきとした組織づくりを行っていくかということは大きな挑戦となっています。
社内イベントのオンライン化は、その課題解決の一つの策として、新たな選択肢になったともいえるでしょう。
参考として、政府が2021年12月に行った「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」の「現在の仕事の種類別孤独感(間接回答)」についてご紹介します。
孤独感が「常にある」と回答した人の割合は、会社役員が3.4%であるのに対し、正社員6.6%、派遣社員9.9%、パート5.1%、契約社員4.3%となっています。
本調査は今回が初めての実施で、コロナ以前の状況との比較はできず、また、仕事や職場内に限定した調査ではありません。
しかし、職場の内外を問わず、「人間」として捉えた場合、職業上、経営層などのリーダーシップにある人と従業員とでは、その人の過ごす時間において、孤独感にギャップがあることがうかがえます。
また、年代では30代がもっとも孤独感を持っていることもわかりました。こういった状況を認識し、それぞれの組織が、どのように一人ひとりの「働く人間」にポジティブに関わり、ウェルビーイングを高めていけるかが、会社経営にとって重要になってくるのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
新型コロナウイルス感染症の影響により広まった「社内イベントのオンライン化」は、「やむを得ない手段」としてでなく、組織内のウェルビーイングを高めるため、その課題解決に有効な方法にもなりえます。リアルイベント・オンラインイベント双方の良さを生かすことで、より柔軟な組織運営ができるようになったといえるのではないでしょうか?
Sonoligoでも、会社のレクリエーション・福利厚生や労働組合のイベントなど「団体向け」に特化した「オンラインイベント」の企画・実施サービスを提供しています。各団体の事情に合わせたカスタマイズが可能です。組織のウェルビーイング向上や成長にぜひお役立てください。
https://www.sonoligo.com/e/wellbeing/online_event
・参考資料
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd101100.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000137.000006581.html
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodoku_koritsu_taisaku/zittai_tyosa/tyosakekka_gaiyo.pdf