紙粘土でウイスキーボトルを作ってみた【イベントレポート番外編】

最終更新日 2021/9/9

戦後の時代に陶磁器製のウイスキーボトルが流行っていたという。それはいまの時代にあるような透明ですらっとしたガラス瓶ではなく、まるでフィギュアのようなカラフルな造形物である。

そんなウイスキーボトルの展示を見に行ったら、造形の精巧さとチョイスのユニークさに感動する思いと同時に、「これは自分でも作って楽しそうだ」と思って、実際に作ってみた。


江坂大樹
1994年愛知県生まれ。名古屋市の東山エリアでシェアハウスを運営している。あらゆる文化が好きで、とくに土地や地域に紐づいたカルチャーに興味がある。

美しいウイスキーボトルが並ぶ展示

かつて製造されていた陶磁器製のウイスキーボトルが一斉に並ぶ展示が、2020年の11月から2021年の2月ごろに、愛知県名古屋市にある横山美術館で開催されていた。

この展示は、文化イベントのサブスクリプションサービスSonoligoで行けるようになっていた展示のひとつである。他のイベントのように時間が決まっているわけではなく、期間中好きなタイミングで行けるところが楽だったので、仕事の合間にふらっと行ってみた。

行こうと思う前に何度か駅構内の掲示物でこの展示のことを見ていたのに、何の展示か分かっていなかった。ポスターには「ウイスキー」という大人な単語があるのに、映っていたのはフィギュアのような造形物だったからかもしれない。

ふつうならあまりセットにならない要素だと思うけど、目の前でボトルを見るとその組み合わせに納得がいく。

シンプルに造形物としてかっこいい。陶磁器のマットな質感に、モチーフのカラフルな色彩が映える。しかも、これがかっこいいだけでなくて中にウイスキーが入るわけである。子どものまま大人になった人になったら一番欲しいものはこれだろう。

主にアメリカで流通していた陶磁器製のユニークなボトルは、愛知県瀬戸市でその多くが生産されていたようだ。

愛知県に住んでいる人はもっとこの存在を自慢していいんじゃないだろうか。

ボトルのモチーフは自由

ボトルのモチーフになっているものは、歴史上の人物や、有名人や、職業や、動物、シーン、乗りもの、ゲイシャガールなど、様々。とにかくなんでもありというところが、個人的には気に入った。(自分は以前に、絵柄がなんでもありというところが面白くてめんこを作っていた)


その中でもとくに気に入ったのがこちら。


『田舎の医者』だ。

なぜ田舎の医者がボトルのモチーフになったのか、その経緯が気になるだけでなく、彼のポーズと表情にもぜひ注目してほしい。さっきまで生きていたおじさんが誰かの魔法で陶器になってしまった感さえあるリアルさだ。

「中に酒が入れば外側は好きに楽しんでいいじゃん」という、ウイスキーボトルの自由さが気に入って、過去に紙粘土で制作をしていた私は創作意欲が湧いてきた。

↑これはゲーム『ポケットモンスター』シリーズに登場する「たいようのいし」を紙粘土で作ってみたもの

昔からよく工作のときに紙粘土を使って制作をしていたけど。ボトルは作ってなかった。

オリジナルのウイスキーボトル

そして作ったのがこれだ。

モチーフはなんでもいいのだけど、私は文化が好きなので、なにか縁のあるものをモチーフにしたい。いま住んでいる名古屋の東山エリアには東山動植物園があり、そこは初めて国内でコアラの繁殖に成功した園なのでコアラに縁を感じて、コアラにした。

蓋もちゃんと開く。


作っていて気がついたのは、これは夏休みの宿題の工作の貯金箱に似ているということだ。お金を入れるという機能さえあればあとはなんでもいいというところに、欽ちゃんの仮装大賞のような自由さがある。大人に夏休みの宿題があったら、みんなウイスキーボトルを作ることだろう。

骨組みとして、イオンで売っていたいちばん安いウイスキーを使っている。味ではなくボトルの外観を楽しむので、中身はなんでもいいという算段である。

これに紙粘土をくっつけて造形している。

色を塗る前はこんな感じ。

コアラボトルでウイスキーを飲んでみる

自分で作ったボトルでウイスキーを注いでみた。こんな華やかなボトルから注ぐのははじめてだ。なにも祝うべきことはないが、気分がめでたい。



まだウイスキーの味の違いがわかるような経験を積んでいないので、むしろ純粋にボトルの外観を楽しめているかもしれない。これってお子様ランチの外観が派手なのと同じ理論だ。

ただ、ボトルがユニークなことで晩酌のおもしろみが増していることには違いない。

ウイスキーの味は普通だが、そうではない楽しさがある。日本料理を嗜む人は器を楽しんでいると聞いたことがある。それに近いものを感じる。

ウイスキーをさらに楽しむボトル

当時の人々は華やかなボトルに自分たちで好きなウイスキーを詰めて楽しんでいたようだ。ウイスキーの楽しみは飲むことだけではなかった。

自由な形にできるし、そこに意図を組み込むこともできるので、誰かを祝う時にまた作って、それを贈ったりしたいなと思った。

個人的には、次は「ガソリンスタンド」の形のウイスキーボトルを作りたい。(スタンドのノズルからアルコールが出てくるようにする)